少女



  「私の可愛い子」
  そう言ってあなたはあたしにキスの雨を降らせる。
  鈍い銀色の、まるで灰色みたいな何もない部屋の中で。
  あなたはいつもあたしを膝の上に乗せて、あたしの話を聞いてくれる。
  それからあなたは、あたしに楽しい話をしてくれる。
  お伽噺みたいな、不思議な話。
  あたしはそれが大好きで、話しているあなたの笑顔が大好きで、
  あなたも話を聞いているあたしの顔が大好き。
  それはとっても幸せな事だけど。でも、それだけじゃ足りないから。
  だからあたしは、あなたに言うの。
  「愛している」
  そうすると、あなたはいつも最高の微笑みを浮かべて。
  「ありがとう」
  その微笑みが、本当はあたしの一番好きな表情。

  ねえ、でも。あなたはいつもあたしに言う。
  「私の愛しい子」
  ねえ、あたしを見て。あたしは本当に愛しい子でしかないの?
  あなたはあたしの裸体を抱きしめるのに。
  あなたはあたしの中に感情も熱も埋め込むのに。
  あなたはあたしの全身にキスの雨を降らせるのに。
  あなたはあたしの全てを知っているのに。
  あたしもあなたの全てを知っているのに。

  それでもあたしは、あなたの「可愛い子」でしかないの?
  ねえ、教えて。
  ねえ……。