「産声・3」

この世で初めての泣き声が響いた時
魂と離れた躰に贈る泣き声があった
見果てぬ夢に殉死した泣き声があった

全ての理由と原因と結末に人は泣く
己の為に 国の為に 世界の為に 他人の為に
だが世界中で流されるどんな涙も
一人の乳飲み子が流す涙には敵わない
何故なら彼らは生きることに対して泣くからだ
生まれた喜びに 絶望に 理想に 狂気に 
呼吸をしたことについて乳飲み子は泣く
己がこれから生きるであろう世界へと向けて

私たちとは違う世界と言語を持つ乳飲み子よ
それが故にお前達は未来と過去を知っている
だがとても哀しいことに
それはまるで確かなことだが
お前たちが私たちの言葉を覚えた頃には
お前たちはそれを忘れているだろう

今日もまたこの世のどこかで
羊水の宇宙から一つの命が地上へと降り立つ
世界への絶望と希望を託し
その命は甲高い泣き声を上げるだろう

                       (2002.**.**)