「産声・1」

言葉を持っている振りをして
全てを手に入れようとする
綺麗な言葉だけを選び出して
宝箱にずっとしまっている
世間知らずのお姫様

羊水の中の命よ
そなたが一番美しい
どんな言葉も持ち得ぬままに
そなたは本当の言葉を知っている

だからどうか
上げないでおくれ
その声を
初めての音(ことば)を

ああ、なにゆえ人は
儚い言葉を頼りにする為
大人と契約を結ぶのだろうか

──ほら、今日も
契約は結ばれた
いのちの臭いがする一室で

             (1997.**.**)