何かを落として来た様な気がして
何かを忘れて来た様な気がして
必死に今持ち得ているものをかき集めてみるけれど
あるべきものはそこに全てあり
失くしたものなんて何一つないけれど
それでも何かは確かに失くなっていて
私の胸のほんの少し上にぽっかりと空虚な穴を作っている

私は何を忘れてきたのだろう?
忘れた事すら忘れてしまったのだろうか?

もうすぐ冬が来るよ、と。
秋風が穴を吹き抜ける瞬間に私に囁く
冬の後には何が来るんだい?
もうどこか遠くへと行ってしまった秋風に私は尋ねる。


ああ私は本当に、何を忘れてきたのだろう?